沿線インタビュー Vol.1中村一郎さん 三陸鉄道株式会社 代表取締役社長

INTERVIEW

沿線インタビュー Vol.1 中村一郎さん

光り輝く三陸を目指して

東日本大震災津波から7年が過ぎました。

震災で大きな被害を受けた三陸鉄道ですが、がれきに覆われた道路やガソリン不足などで交通手段に困っていた地域の皆さんに少しでも早くお役に立ちたいとの思いの下、震災から5日後の3月16日には久慈・陸中野田間で列車運行を再開しました。その後、3月中には宮古・岩泉小本間を復旧し、以後は、復旧工事を進めながら、順次復旧させていきました。国や関係自治体、更には全国の皆さんの御支援もいただき、震災から3年後の平成26年4月には、南北リアス線の全線で運行再開を果たすことができました。その時の一番列車に私も同乗しましたが、沿線の皆さんが、各駅などに集まり、大漁旗や小旗を振ってお祝いしてくれる姿は、今でも忘れることができません。改めて、御支援、御協力をいただいた多くの皆様に御礼申し上げます。

三陸沿岸の被災地では、復興が着実に進んでいます。

自力での住宅再建や災害公営住宅など住環境の整備、防潮堤などの安全施設の整備、医療施設や教育施設の復旧、三陸沿岸道路を始めとした交通ネットワークや市街地の整備、大型商業施設の整備なども、その進捗が地域の皆さんにも実感できるまでに進んできています。

一方、平成26年度に全線で運行再開した三陸鉄道は、マスコミで取り上げていただいたことや前年の「あまちゃん」ブームの効果もあり、多くのお客様に乗っていただきました。その後、年々、ブームも落ち着きを見せ、沿線の人口の減少等もあり、利用者数が減少してきており、厳しい経営環境にあります。

そのような中、平成29年10月には、会社として11年ぶりに、2人目の女性運転士が誕生するという明るいニュースもありました。

彼女は、地元の高校卒業後、首都圏の鉄道会社で勤務しましたが、故郷に少しでも貢献したいとの思いで、三陸鉄道に入社。運転士を目指して様々な業務に励み、見事に国家試験にもパスしました。多くの皆さんから親しまれる運転士を目指し、日々、乗務に当たっています。

また、毎年、冬のシーズンに北リアス線を走るこたつ列車ですが、29年度は、お陰様で、満員御礼の状況となっています。

さらに、第1回鉄道むすめの人気投票コンテストでは、三陸鉄道の「久慈ありす」が、見事、優勝を勝ち取るなど、うれしいニュースもありました。

そのような中、震災で不通になっているJR山田線(宮古・釜石間)は、現在、復旧工事が進められ、平成31年3月には、JRから三陸鉄道に経営移管される予定となっています。

移管後は、これまで、北リアス線、南リアス線の2つに分かれていた路線が「リアス線」として一つにつながり、路線延長も163kmと、第3セクター鉄道としては、日本一長い路線となります。

多くの皆さんに愛され、御利用いただける鉄道となるよう、引き続き社員一丸となって頑張って参ります。

また、同年夏には、約2か月の期間で、三陸の各地域を会場とする三陸防災復興プロジェクト2019が開催されます。震災の教訓を後世に伝えるとともに、三陸地域の魅力を生かした取組を行い、交流人口の拡大や地域経済の活性化につながるよう、三鉄としても、連携しながらしっかり取り組んで参ります。

さらに、同年9~10月には、ラグビーワールドカップ2019の試合が釜石市でも開催され、鵜住居地区に、現在スタジアムの整備が進められており、3月14日からは、大会を盛り上げるためのラッピング列車も運行しています。

このように、平成31年は、三陸鉄道にとっても、三陸地域にとっても大きな出来事が予定され、大きな飛躍を遂げる1年にしていかなければなりません。会社の使命としては、三陸沿岸を縦貫する鉄道として、沿岸の皆さんの足としての役割と、交流人口の拡大により地域の振興に貢献するという2つの役割があります。

今後とも、多くの皆さんに笑顔と希望を運べるよう、地域の皆さんの協力をいただきながら、取り組んで参ります。

平成30年3月
三陸鉄道株式会社

代表取締役社長 中村 一郎